飼い主様が入院し、8ヶ月後に入院先の病院で他界。

遺産整理の方が飼い主宅に入ると中にはアテナちゃんがいました。

8ヶ月もの間、飼い主様がいない状態で生き延びていました。

近所の方が玄関扉の新聞受けの隙間からご飯を与えてくれていたのか、

もしくは食べたくないものまで口にしながら生き帯びたのか真相は誰にもわかりません。

わかることはアテナちゃんのおトイレは8ヶ月分の糞尿で溢れ、人が出入りしていた形跡はないということ。

当施設へやってきたアテナちゃんの匂いも凄まじいものでした。

それから当施設で過ごすこと一年四ヶ月。

特に猫が好きなわけでもなく他の猫ちゃんと遊んでいる様子もありませんでした。

人が大好きで、話しかけると「にゃにゃっ!」と返事をしてくれたり、おやつを手にすると誰よりも先に走り寄ってきてせがんだり、来客者様が帰られる時、甘えて引き留めたりとたくさんの可愛らしい思い出ができました。

そんなアテナちゃんも運命の人と出会い、トライアル期間を経て本日幸せになれました。

トライアルに送迎した時、自分でも驚くことが起こりました。

施設の子達に新しい飼い主様ができることは何よりも嬉しいこと。

施設から卒業し、その子がいた空間にはポッカリと穴が空き、私の心も嬉しいのだけどもちろん寂しい気持ちもあります。

その寂しい感情と嬉しい感情のコントロールというか、整理ができていました。

慣れるものではないですが、何度も経験していることです。どんな時でも保護施設の人間としての、送り届ける人間として振る舞いができると勝手に思っていました。

結果ですが、私は初めてトライアル送迎で里親様の前で涙を流してしまいました。

自分でも本当にびっくりしました。

「ちょっと……、あれ? すみません。なんか僕、涙腺おかしいです…」と里親様に伝えるとボロボロと決壊してしまいました。

里親様に心配される中、こちらに何度も近付いてくるアテナちゃんを
「こっちじゃないよ、新しいお母さんをそっちやよ?」と、引き離し早々に説明を終え、里親様宅を後にしました。

施設に戻るとアテナちゃんのお気に入りの場所に本猫はいません。

とても小さい体でとても大きい存在でした。

そして。

トライアルが終了し再度正式譲渡の手続きの為、里親様宅を伺いました。

トライアル送迎からの帰り際、
「どのみち、正式譲渡時にもう一度会えますから!」と出てきましたし、正式譲渡で会えることを楽しみにしていました。

それなのに・・・

一切私の前に姿を現しません笑

ベッドの下に隠れてしまいおやつでおびき寄せても全く出てきません笑

あの涙涙の別れはなんだったの?笑

でもこれぐらいがいいのです。

心から信頼できる飼い主は一人でいいのです。

私の役目は終えました。

アテナちゃん。今度こそ最期まで一緒にいてくれる飼い主様と幸せにね!