由希のこと。
2020年ももう終わろうとしてる今、もうご報告しないといけません。
2020年5月15日。
白血病キャリアで施設で暮らしていた由希がお空へ旅立ちました。
もう旅立って半年が経過しています。施設の子達がいる中、いつまでも悲しんでいられないと動き続けて誤魔化してきました。
旅立った当時は、何も考えてなくても、車の運転をしていても頬を濡らしました。
感情が馬鹿になっているのか、勝手に涙が出ていました。
その状態も今では脱しましたがこうして由希を想い文を綴っている指が震えています。きっとこの文が書き終える頃、またしても悲しみに打ちひしがれているのだと思います。
施設を立ち上げて一番最初に各々の保健所から合計5匹の猫ちゃんを引き取りました。
由希はその最初のメンバーの1匹です。
某保健所から職員さんが怖くて触れない猫ちゃん、当時の名前は「ギャーちゃん」、当施設での名前はハツハルを見に行った時に、別室の隔離部屋で由希は1匹ケージで暮らしていました。
エイズ・白血キャリアの子達は処分の対象となることが多く、生かしてくれているその保健所に驚きました。
当施設は小さい施設でまだ立ち上げたばかり。隔離部屋はあるけども引き取るにはなかなか難しい状態でした。
由希は私がケージに近付くと、ゴロゴロと喉を慣らし体を擦り付けてきました。
「保健所の譲渡会に参加が難しい子を引き取ります」と保健所に伝えているので、ギャーちゃんことハツハルはお願いされていました。
由希も同様で、エイズ白血キャリアの子達は家族として迎え入れられる可能性が極端に下がります。
せめてケージではない、走り回れる場所を。
そして必ず白血病キャリアでも貰ってくださる方を見つける。
という想いで、由希も迎え入れました。
すぐに来訪者様、ボランティア様、支援者様のアイドルになりました。
ワンちゃんばりに懐っこく、部屋に入ると飛んできます。
座ると膝の上で甘えてきます。
きっと由希にも良い出会いがあると思わずにはいられませんでした。
由希には何度もヒヤヒヤさせられました。
嘔吐や下痢をするたび、
『まさか、発症した?』
と、頭をよぎりました。
その心配も杞憂に終わることばかりで、由希はムチムチと健康に生活していました。
「もう白血病陰転してるのでは?」と再検査に行くほどに元気でした。
しかし陰転はしていなく、爆弾を抱えての生活。
仔猫の状態で白血病キャリアの場合、3歳から4歳ぐらいで発症してしまう可能性が極めて高い。
こんなに元気なのに、生き残れる可能性が低いなんて・・・
そんな辛い現実が実際に起こりました。由希は推定3歳で発症しました。
いきなりご飯を食べなくなり、歩けなくなりました。
病院に連れて行くと、発症している。とのことでした。
獣医さんの前で、大の大人が泣き崩れました。
それからなるべく、由希と過ごす時間を増やしました。
白血キャリア部屋にお布団を敷き一緒に眠りました。
抱きながら何度も何度も声を掛けました。
「由希?しんどい?」
「ほら? 美味しいご飯やよ? ダメ? 食べられない?」
「お水は? お水も嫌なん? ほら、ちょっとでいいから飲もう?」
「由希? 得意のゴロゴロは? もう鳴らせない? もう一回でいいから聞かせてよ」
「由希、怖い?怖いよね。一人で逝くのは怖いに決まってるよね・・・」
本当に一緒に死んであげたいって思いました。
せめてもう一度だけでも美味しいご飯を食べてもらいたくて、病院へ連れて行きました。
処置後、会計待ちをしていると由希に発作が起こりました。
酸素吸入や、痙攣する身体を先生と看護師さん、私は抑えました。
由希の顔が苦しそうに歪み、
『先生!もう楽にしてあげてください!』と口に出し掛けた時に、由希の体から力が抜けました。
最初に引き取った5匹のうち由希以外の4匹は、新しいご家族と幸せに暮らしています。手をつけられなかったハツハルも譲渡前には抱っこもできるようにすることができました。
由希だけを幸せに導くことができませんでした。
動物霊園にて手厚く送ってもらい、由希は小さくなって施設へと帰ってきました。
由希が施設へ来てしばらくして、ハトリがやってきました。
2匹は仲が良く、施設で隔離部屋でフリーだけども一人ぼっちだった由希にお友達ができていたのです。
今、ハトリは小さくなった由希と一緒に暮らしています。
ハトリはご飯を必ず残します。
猫は、少しづつご飯を食べる動物だから?
きっと違います。
ハトリは由希の分をいつも残して置いているのです。
その証拠に、時間がたっても残しているご飯を完食することはありません。
由希が行けなかった幸せの場所。
どうかハトリは辿り着いてほしい。
全国、全世界で病と戦う動物たちがどうか幸せになれますように。
由希を愛してくださった皆様、心から感謝申し上げます。
由希、やっぱり涙を堪え切れなかったよ。
楽しい感情、この辛い感情、由希と出会えていなかったら感じることができなかった。
俺はまだまだやることがあるからすぐそっちには行けんけど
虹の橋のたもとで、遊びながら待っててね。
一緒に虹の橋を渡ろうね。再会を楽しみにしながら生きていくよ。
一般社団法人 Reef Knot
代表理事 飛田 俊